不平は天から享ける最大の貢物である
ジョナサン・スウィフト
前回から少しあいだが空いてしまいましたが、WorldCon Dublin 2019のリポート第2回です。今回はイベントの目玉である「プログラム」、要するに催し物について説明します。
催し物にはいくつかの種類があります。ざっと思いつくものを羅列します。
- パネル:複数の登壇者が出るトークセッションのようなもの。登壇者は作家、ファン、編集者など様々。
- Kaffeeklatsch(コーヒークラッチ):コーヒーを飲みながらホスト(作家など)と直接話せる小さなグループセッション。Literary Beerというビールを飲むバージョンがある。
- 朗読:その名の通り朗読劇。
- アカデミック:高度な内容のセッション。登壇者もPh.D.のような学位の保持者が多い。
その他、参加していませんが、ゲームをやったり、演劇やコンサート、サイン会などなど、ほんとうにたくさんのプログラムが存在します。
日本のSF大会やはるこん、京フェスなどに行かれた方はご存知だと思いますが、それの拡大版だと思っていただいて間違いないでしょう。
このプログラム、5日間に渡って開催されるので、凄まじい数になります。
とてもではないですが、全部は見切れません。また、人気のプログラムは事前に並ばないといけないので、連続で見るのもちょっと難しいです。休憩場所もたくさんあるので、気になるプログラムを休み休みに見るぐらいがちょうどいいのかもしれません。
ローカル、つまりアイルランドの人や、ヨーロッパ近隣の人は土日にかけて集まるようで、週末に混雑していました。
実際に見たもの
それでは、実際に見たものを紹介しましょう。思い出しながら書いているので、順不同です。
藤井太洋さんによる朗読
藤井さんは10個ぐらいのプログラムに参加しており、朗読もやられていました。英語力が天から降ってくるといいのにな! と痛感します。
全体的にはウェルカムな雰囲気です。
パネル
Sci-Fire同人でもある麦原遼さんはパネルにエントリーしており、そちらも見てきました。まず、パネル登壇者には打ち合わせ室が用意されます。
実際のパネルでは、モデレーターが司会進行をしながら進めていきます。このモデレーターも作家などのクリエイターが務めます。
ちなみに麦原さんが登壇したパネル「翻訳されざるSF&F」では、モデレーターが時間を間違えるという珍事があり、藤井さんがモデレーターを務めました。この「ワールドコンパネル初体験」については、2019年11月刊行予定のSci-Fire 2019でリポートしますので、お楽しみに。
ちなみに僕もパネルに申し込んだつもりでいたのですが、申し込みフォームの記載を間違えていたのか、つまらない奴だと思われたのか、登壇はできませんでした。残念!
他に印象に残ったパネルは……
セルフパブリッシング2019
セルフパブリッシング情報です。最先端の情報が聞けるかと思ったらそうでもなく、割と既知の情報が多かったのですが、そこが逆に印象に残りました。
西洋の期待の外側で書く
これは香港、台湾、インド各1名とアメリカの編集者というセッションだったのですが、「アメリカの編集者にこの話のヒーローは誰だとか言われて困る」という率直な意見が飛び出ていました。やはりSFの本場はアメリカなのですが、そこでの物語構造というか、文化的なコードというのは他の世界にとっては自明ではないというか。
トーク
登壇者が一方的に話すプレゼンのようなプログラムもありました。印象に残っていたのは、南アジアのSF&F紹介。インドは英語の出版文化もあるようですが、それが英米などの西洋圏に届かないので苦労しているようです。
アカデミック
「DNA検査とその実装」というパネルに参加しましたが、英語の聞き取りに苦労しました……。登壇者も学者などが中心なので、最先端の遺伝子検査の実態などについて、興味深い話が聞けました。
質問コーナーもありましたが、質問者とのシナジーは難しいですね。イベントなどで「質問タイムに延々と自分のことを話す人」は必ずいますが、世界共通だということがわかりました。
他にも色々と楽しいプログラムはありましたが、たくさんありすぎて忘れました。
会場
最後に、会場について。メインのコンベンションセンターとGibson Hotel(ギターのギブソン!)があり、アカデミックなどはGibson Hotelにまとめられていました。
Gibson Hotelはギターの形をした面白い建物だったのですが、写真を撮るのを忘れました。
というわけで、ワールドコンリポートの第2回をお伝えしました。次回はネットワーキングについてお伝えします。