なるほど、セカイ系×なろう小説=異セカイ系やね

いや。ほんまあかんで。セカイ系ゆうたら、あれやん。ゼロ年代やね思うやん。「わ、わ、動物的消費! 否定神学論法!」ゆうて、ああ、なんか古いわーって。けど、それはちゃうね。そういう風に早合点したらあかんねん。これはなろう小説のテンプレをなぞった高度に批評的な小説やねん。セカイ系ゆうたら「君と僕の閉じられた世界」が舞台なんやけど、ゼロ年代カルチャーを代表する若干古びた様式であることは否めない。そこで作者の名倉編はテン年代を代表する「なろう小説」のテンプレである異世界転生モノをミックスアップしたゆうわけや。……ちゅうか、テン年代って誰もつこてへんよ。語呂悪。

あらすじはネット小説投稿サイトの常連名倉編(作者と同じ名前やん!)がある日「死にたい」思うた瞬間に自分の小説に入るところから始まる。もしかしたら名倉編ちゃうかもしれんけど、名前ころころ変わる。で、その小説内で編は主人公のカミサマなんやね。いわゆるチートキャラや。無双な、無双。もう敵なし。ヒロインの猫耳イヴにゃんも文句なしに可愛いし、やったやん。言うことなし。ところで、小説ってやっぱ人死ぬと盛り上がるやん? 編君の書いた『臥竜転生』もその例にもれず、ちょいちょい人死ぬねん。となると、小説ん中入ってもうた編くんは、目の前でイヴにゃんのママが死ぬとこ見てしまうわけやん? 自分のせいで。キッツ。そこで編君はママを助けようとするんやけど、あかんねん。なんか黒い丸が出てきて、飲み込まれてしまう。いなかったことになってまうねん。はじめ落丁かな? おもてんけど、そうやない、講談社悪ないねん。物語が闇に食われて消えてまうねん。

  1. 小説に書かれていないことを小説ないでしてはいけない。
  2. 小説と現実の中を行ったり来たりできる。
  3. 小説のランキングが10位圏外になると、小説内には入れなくなる。
  4. 人が死ぬなどの悲劇がないと、ランキングは上がりづらい。

こないルールを守りながら編君は小説の登場人物を助けるために小説の中と現実を行ったり来たりするんやけど、さて、編君どうするんやろねぇ。

辛。

物語が後半になるにつれて、編君はランキング上位者とコンタクトをとったり、ハーレムエンドをどうやって正当化するかっちゅう難題をつきつけられたり、いろんな問題と向き合う。なんか、いい奴やねん、編君。僕やったら「ほな、イヴにゃんのママには犠牲になってもらおか」思うてしまうけど、編君はそうしないねん。なんかもう、めっちゃいい人やねん。イヴにゃんにも心があってラッキースケベに悩んだりとか、ほんますごいねん。僕なら「まあ、現実にも頭空っぽの人いっぱいおるからええやん、逆にリアルやで」なるんやけど、編君はそこも突き詰めるねん。なんかストイックやねん。

物語の最後はメタ構造にメタを重ねつつ、「そう来るか!」みたいな感じになる。僕みたいにSF創作講座通ってた人は「あれ、こいつあいつやん!」思うところもあるんやけど、そのハイコンテキストな感じがほんとゼロ年代の香りなんよ。なんかまとまらんけど、ほんま珍しい小説やから、みんなも読んでや。このタイミングやからこそ生まれた小説やで。これぞ現代文学や。

そうそう、編君は現実のものを思い出すと、小説の世界から現実に戻れるねん。シュンってな。で、死にたい思うと、「死にたいシュン!」って小説世界に入れるねん。ほな、僕もそろそろ戻るわ。酢シュン!

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)書籍

作者名倉 編

発行講談社

発売日2018年8月22日

カテゴリー文庫

ページ数333

ISBN4065125553

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投稿者:

高橋 文樹

小説家。ゲンロンSF創作講座に一期生として参加し、ゲンロンSF新人賞飛浩隆特別賞を受賞。Webプログラマー、DIYerなどの多様な側面を持つ。

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